技−デジタル復元技術

デジタル復元術

 あえて、こういう古臭い言い方をしてみましたが、写真と言う技術が生まれてまだ間が無いころ、「写す」と言う技術は大変高度なものでした。 

ところが時代とともに「押せば写る」時代へと変化し、そして「デジタル」の出現により、多少の失敗は直せる時代が到来し、このデジタルの出現は、多くのカメラマンや印刷関係の技術者を、失業へと追いやりました。

そして専門家不要の時代となってしまいましたが、しかしながら「デジタル復元技術」は、まだまだ「押せば写る」あるいは「キーボードひとつ叩けばできる」と言える時代では有りません。 つまり「デジタル画像」そのものの歴史はまだ始まったばかりです。

その中で、「綺麗に撮る」あるいは「綺麗に修正する」ことは、すでに素人でも出来ます。しかしここで一番大事なことは、「綺麗に」と言うことと、「正確に」と言うことは、同意語では有りません。まして、「修正」することと「復元」することは、まったく違う意味を持ちます。

 だからと言って、「デジタル復元」とは、最先端の特殊技術という事ではなく、すでに何十年も前から行われてきた「アナログ写真」の技術の応用にほかなりません。 ただ、どんな分野の技術でもそうですが、技術とは必要だから生まれたものに過ぎないと言うことなのです。

テクニシャンという言葉がありますが、技術が先走ると本来の「目的」を見失います。大事なことは「目的意識」を持つことだと、わたしは思います。

 そこで「修正すること」と「復元すること」との違いとは何なのか?を考えてみる必要があります。つまり「修正」とは直す・改める・正す事を意味し、「復元」とは元に戻す事を意味します。

 大事なことは、修正とは「本来の姿」に対して、忠実である必要はなく、ただ「見た目」がよくなればそれで良いのですが、しかし復元となると「本来の姿」に対して「忠実」である必要が必ずあります。ですので「綺麗に修正する」と言う行為と、「忠実に復元する」と言う行為はまったく違う意味を持ちます。

 特に文化財や歴史の世界において、この違いは重要で、仮にそこのところに「主観」を持ち込むと、「仮説」だとか「捏造」と言われかねません。 そうならないためには何が必要か?それが技術だとわたしは思います。

素人でも「オート機能」を使うことにより、「綺麗に仕上げる」事は可能となりますが、しかしそれは「機械任せ」であり、その機械は何を「根拠」として、綺麗に仕上げているのか?その部分はほとんど明らかにされませんし、ましては「元に戻す」と言うことは意識されていない場合が多く有ります。

 ですから、「オート機能」を使っての「正確な復元」は、まだ現在の技術では出来ないと考えてください。

 先ほど、技術が先行すると目的を失うとも言わせていただきましたが、復元に必要な技術は一つだけでは有りません。文化財と一口で言っても、材質も違えば、保存状態も違います。それぞれの状況に合った、あるいは目的に合った複数の技術を試してみる必要があり、そしてその技術はいかに「正確」に行えるか?が復元結果を大きく左右します。

 つまり、「デジタル復元術」とは「職人技」としての要素を多く含みます。

 
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