広義の文化財
しかしながら、もう一度「文化財」の定義を思い出していただきたいのですが、文化財とは「精神的価値を有した財産」全般を指しているはずで、指定文化財とは、その中の「一部」に過ぎないことを思い出してください。
文化財とは、大きく分けると3つに分けられると思います。
1.指定文化財
2.指定を受けていないが文化的価値を有する文化財
3.内容の確認や調査が行われず、価値すらわからない文化財
指定文化財とは、「価値の高いもの」として確認されているもの。
次に指定を受けていない文化財は、指定を受けた文化財に比べて価値が低いのでしょうか?
いぇ、必ずしもそうとは言い切れないのが現実です。
つまり文化財保護法には第4条「国民・所有者の心構」の中に
2 文化財の所有者その他の関係者は、文化財が貴重な国民的財産であることを自覚し、これを公共のために大切に保存するとともに、できるだけこれを公開する等その文化的活用に努めなければならない。
と、はっきり書かれているように、所有者には「所有権」はあるが文化財が貴重な国民的財産であることを自覚し、とある様に「国民の共有物化」と、そしてこれを公共のために大切に保存するとともに、できるだけこれを公開する等その文化的活用を促しています。
つまり、「補助」を受けるには「義務」も課されるわけですが、指定文化財の多くは社寺などの宗教関係に集中します。
お寺や神社は檀家や氏子の方々の寄付を元に維持されていますし、もともとそれらの文化財は寄付により作られているものが多く、「団体固有の財産」と考えるところも多く有ります。
それを部外者から「国民的財産」とみなされたり、「保管義務」や「公開義務」が課せられることに対して強い反発があります。
また、もうひとつ大きな問題なのが「盗難」です。
つまり指定文化財は、存在が「公表」されますから、盗難に合い易くなりますし、その防犯にお金が掛かることになりますが、しかし指定を受けることにより得られる「補助金」は、決して全額ではありません。
言い換えると、指定を受ければ義務も課せられる上に「所有者負担」も増えてしまいます。
ですので、実は指定文化財以上の文化的価値を有しておきながら、指定を辞退されている文化財のほうが、はるかに多く存在します。
ただ、それらの文化財は、所有者が決断したものであり、それに対して第三者がとやかく言えるものでは有りません。
しかし、3.内容の確認や調査が行われず、価値すらわからない文化財に関しては、少し話が違ってきます。
まず「指定文化財」になるには、十分な「調査」が行われますが、そのための費用も文化財保護予算に含まれています。指定文化財とは調査された「結果」に過ぎません。
ですが、文化庁あるいは地方自治団体は世の中の「すべての文化財」を調査したのでしょうか?
いいえ、広義の文化財は「ヒトの精神的な営み」を「記録した財産」ですから、貴方の身の回りにも実は文化財はいっぱい存在します。しかし、それらに対して調査をされましたか?
実は調査すらされていない文化財の方が、世の中にはさらに多く存在します。
だから『ウィキペディア(Wikipedia)』には未指定の文化財のなかにも貴重なものは多数ある。と書かれていますし、わたしもそう思っています。
つまり、文化財はピラミッド型であり、指定文化財はその頂上付近の極一部に過ぎないということになります。
そして、文化財保護予算とは、主にそれらに対して使われているだけなのです。