私に出来る文化財保護
私はもともと写真の専門家です。
2000年のはなしですが、仕事先の神社には古い「鳳凰を描いた板戸」があり、それを修復に出して返って来たので「記録写真」の撮影を頼まれました。大型カメラで撮影すると修復されたはずの鳳凰の絵は、絵の具が剥げたままでした。
当時私は、すでに撮影以外に「デジタル画像処理」を手がけておりましたので、依頼されていないにもかかわらず、その板戸の画像をコンピューターに取り込み、絵の具の剥げた部分を「修正」したところ、見事鳳凰の姿は甦りました。
それをきっかけとして、「画像による文化財復元」と言う独自の技術を編み出し、試行錯誤を繰り返していますが、私にはそれを創めた者として、研究を重ねて発展させる義務を持ちます。
そして、この技術は文化財に残された「文化的価値」の記録を、後世に伝えるための有効な技術であり、それを広く普及させるための啓発活動や講演などにより、真の文化財保護の有り方を訴える責務が私にはあります。
また普及させるには優秀な人材が必要です。
わたしはこの技術を私利私欲のために、特許等により独占するつもりはありません。
この技術は最先端のデジタル技術を使っていますが、何も最新技術という事ではなく、アナログの写真技術の応用でもあります。デジタルの普及に伴い、昔からの「撮影技術」を持たない素人でも写真を撮れる時代になりましたが、しかしそのレベルでこの仕事がこなせる訳ではなく、言うならば「熟練した職人」の様に、正確にそして根気良く作業を行える精神性を必要とします。
それらは学校の授業として学ぶことより、技術とは経験することにより身につきます。
優秀な人材を多く育てるには、それだけの経験を積ませる必要がありますし、それは同時にこの技術の発展をも意味します。そういう環境を作る義務がパイオニアとしての私にはあります。