当社の復元画像をお見せすると、多くの方は驚かれる。
そして最初に質問されるのが「こ の色はどうしてわかったのですか?」と聞かれる。
これは専門家でも素人の方だろうと、同じ質問をされる。
つまり、どなたも「色」というものに興味を示される。
しかし、復元された「かたち」には最初に興味 がいかないようであるが、じつは僕は写真の専門家として、「色」についてはまったく違う見解を持っている。
例えば、あなたの目の前に「赤いバラ」が有ったとする。
その同じ赤いバラを他の人が見たとき、 果たしてまったく同じ「赤」として感じているだろうか?
つまり、同じ赤でも、人により感じ方が違うこともあり得る。
それは「瞳の色」も 影響するし、あてられている光の影響もうけるし、はたまた日本で見た場合と、イタリアで見た場合では、違って見えるという。
さきほどの瞳の色と、緯度と光の色温度などの影響から、日本人に「純白」を選んでもらうと、実は「青白い白」を選ぶとの事。
それに比べ欧米人は「オフホワイト」と呼ばれる「少し黄色身を帯びた白」を純白と感じるらしい・・・
つまり、不確定要素がとても多く、ましては写真の世界では「記憶色」と呼ばれるが、たとえば言葉で「青い空」「赤いバラ」などからイメージする色は、実は自分が実際に見た以上に「鮮明」に記憶され、 色鮮やかなイメージが頭の中に描かれる。
そして、アナログ写真の時代、実は写真の色は、実物に忠実に写ることより、色鮮やかに写るように調整されていた。
でもそんなことは、ほとんどの人はご存じない。
つまり、僕が言いたいのは「画像」に置いて、色に拘っても絶対的な色は再現されない。
ましては「分析」に置いて、成分が判明したとしても、同じ成分を含むまったく違う絵具も存在するし、また岩絵の具の粒の大きさの違いが、色の濃度として影響する。
だから、分析の必要性を実はあまり感じていない。
しかしながら、色は不確定要素がとても多いが、「かたち」は違う認識の人はそう多くないと思う。
つまり「丸い形」に描かれたものを、「四角」と感じる人や、四角を三角と感じる人はまずいない。
そうすると、デジタル復元画像に置いて、果たして一番大事なものは何だろうか?
お分かり頂けると思う。
つまり「デジタル復元」はデーターであり、物質を伴わない。
だから、絵の具の色を忠実に再現しようとしても、複数の要因において、忠実な再現は不可能に近い。
当社は「痕跡」をもとに復元を試みており、写真は存在しないものは写らない。