去年の暮れから正月にかけて、一つの仕事が飛び込んできた。
何やら遺言書の消された部分を読めないかと言う問い合わせである。
私も何度も上から消された文字の復元経験はあるが、しかし実物からではなく、コピーからとの話であった。
早速送ってもらった原稿を1億3千万画素のデジカメで撮ってみた。
すると・・・・
このコピー機は、微妙な濃淡を、トナーの濃度で表現するものではなく、新聞の写真印刷と同じ「網点」の大小で、グレーを表現するものであった。
濃淡は網点で表現されている |
つまり、実物からの復元作業で有れば、元の下の文字のインクなり、墨なりに微妙な色がついていたり、上から消された線でも下の文字との濃度差や色調の差があるので、それをもとに作業が可能となることも多い。
ところが今回は、原稿自体がコピーであり、トナーの黒一色で、しかも濃淡は網点の大きさで表現されているものだから、画像処理の段階で、切り分けることができなかった。
本来、諦めるべきなのだが・・・
元々この復元の仕事は、一つの完成した技術があるわけではなく、すべては現状が違うので、それぞれに合った方法を「試行錯誤」で探し出して、ここまで技術を伸ばしてきた。
そこで考えられることは、ある程度の部分で、下に書かれている文字の見当がついているので、それ上から消された線を「人力」で消していくことにした。
私としても前代未聞の経験であるが、何度かやり直していると、文章としてつじつまが合う文字が判ってくる。
そうなれば、あとはその文字を探し出す作業となり、最終的には全て読み取ることができた。
現状画像 | 復元画像 |
(資)文化財復元センター おおくま