11月の始めに、Facebookを始めた。
ツィッターなどの短文のやり取りはあまり好まず、Facebookも控えていたのだが、突然参加することにし、友達申請をこちらから多くの宗教関係者へと送った。
その中の一人から、「雪舟の龍図があり、それを復元したい」とメールが入った。
広島のある寺の住職で、寺に伝わるもので、どうも6代目の領主からの授かりものだという。
その寺の創建に関わったその領主と、雪舟は時代的に同じ時代であり、雪舟のパトロンである「大内家」とは、血縁関係もあるという。
つまり「状況証拠」としては、限りなく本物に近いと思われる。
しかし、ちゃんとした記録が残っておらず、2年前に京都の専門家に見せたところ、「紙は当時のものである」と言われたが・・・
肝心の真贋については「雪舟の龍図は見たことがないから、何とも言えない」と逃げられた様子。
で、今回の復元に当たり「大日本スクリーン」の文化財用の大型スキャナーを使い、「現状画像」と「赤外線画像」をスキャンしてデーターを得た。
すぐに作業にかかったのだが、来年は辰年であり、旧正月までには掛け軸を作りたいという。
1か月間、仕事場に泊まり込み、作業を行った。
現状画像に描かれている背景の斜線や吹き墨は、雪舟が描いたものではなく、どうも痛みがひどく、ネズミにかじられたようで欠損部分が
この黒い部分がすでに欠損しており、しっぽは修復時に書き加えられている。
この雪舟の龍図には「写し」と呼ばれる、他の絵描きによる「模写」がいくつか残っており、それらを見本に、復元画像ではしっぽの部分と左側の前足の外側の爪が、それらの写しでは上向きに描かれており、背景の斜線と吹き墨をなくした形で、新しく背景を描き、そこへ龍を切り抜いて貼り付ける形で、復元は完成した。
(資)文化財復元センター 大隈 剛由