2007年6月
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アラジンと魔法のランプ
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談合の話から、いきなり千夜一夜に変わったりするが、実はうちの「みえないもの」の復元はいろんな撮影技術を用いるのだが、そのなかで特に「赤外線撮影」は有名であり、ネットの検索でもキーワードとしてそれでうちのホームページにたどり着くヒトが多い。


一般的に赤外線を使うと「何でも見える」と誤解されているが、現実はそうではなく、ある一定条件をカバーしていないとなかなか効果が出ない。
また出たとしても「一目瞭然」とは程遠い状態だったりする。
次が「紫外線撮影」なのだが、これは特殊な部類に入り、特に昔は「鑑識」つまり、警察で主に使われたり、美術品の「修復跡」の調査などに用いられていた。
これも効果が現れるのは稀である。
そうなると・・・わたくしが得意とするのが「拡大撮影」とでも言おうか、細部を顕微鏡ででも覗く様に拡大してみていくと、結構肉眼ではわからない情報が残っていたりする。
おおむね、今までの復元はこれらの組み合わせで解決したのだが、世の中にはそれでも判らないものがいっぱいある。
そんなおり「ポリライト」という「警察用特殊ライト」の存在を知った。
きっかけはNHKの「甦る国宝・源氏物語絵巻」のシリーズで東文研のカメラマンが使っていたことからで、それを使うことで「肉眼では見えない」着物の柄が浮かび上がると言う。
そんなバナナ・・・いゃいゃそんな馬鹿な・・・と思いながら見ていたのだが、それは「蛍光作用」を捕らえる事で可能になると言う。
しかし、わたしの知識では「蛍光」とは「紫外線」をあてる事により、物質そのものが光を発することで、それは「可視領域」で確認できるものであると言うこと。
なのに、その特殊ライトは紫外線ではなく「可視光線」を当てるとの事。
そんなこと起こるはずがないと思いながらも、テレビで見る画像に胸をときめかしたりした記憶がある。
「あのライトがうちでも使えればなぁ・・・」とうらやましく思ったものの、どうせ高いんだろうなぁ・・・
うちが買えるはずがないと諦めていた。
それが最近手に入り、使う機会をうかがっていた。
で、今回あるところから「古い領収書の金額を知りたい」と言う話が舞い込んだ。
現物が届き、見てみるとずいぶん変色していて「カーボン紙による複写領収書」であった。
20070615-color
まず最初は「赤外線撮影」を試みたがまったく反応しない
20070615-IR-76
赤外線は「墨」つまりカーボンには反応するはずだが、あいにくここで使われているカーボン紙は黒色ではなく「青色」のカーボンであった。
青色カーボンは「染料」によるものらしく、赤外線では反応しない。
で、次に紫外線撮影を試みた。
20070615-uv
紫外線は、肉眼では同じ色に見える「インクの成分の違い」などを調べるのに使われることが多く、染料である青色カーボンだから、反応が出ると思われたが、それもまったく反応がない。
さぁ・・・こうなると大変で、次に考えられるのが、カーボンで複写されたものなら、上から圧力が掛かっているはずだから、紙の上に凸凹が残っていることが考えられる。
20070615-syakou
つまり、表面の凸凹を写せば、文字がわかるはずである。
しかし、これでも判らない。
困ったものだ・・・しかし仕事として受けた限りは判りませんでしたでは済まない。
次に考えられるのは、モノクロ写真を自分で撮ったことが有る人ならわかるのだが、風景写真で青空を黒々と落として、見た感じにコントラストを高くするには「赤色フィルター」を使う。
つまり、青色の補色である「赤色」のフィルターをかける事により、青色の濃度が上がるという特徴が白黒写真にはある。
それを応用して、青色カーボンの文字を濃く写すために「赤色フィルター」を用いた。
20070615-aka
少しはコントラストが上がったものの、数字は読み取れない。
あぁ・・・ここまでくると今までのうちの技術ではどうしょうもなく「おてあげ」となる。
さぁ・・・・ここで「ポリライトの出番」となるのだが・・・実は一番最初にポリライトを試していた。
おかしな話だが、ポリライトは、「特定波長の色光」だけを発する機械であり、紫外線域から可視光線の全域をカバーして、赤外線域までの光を作ることができる。
ただ、光量はあまり大きくない。
つまり部分に絞って使うにはいいが、大きなものを照らすほどの光量はない。
だから、最初に書いた赤外線も紫外線もすべて別のライトを使って撮っていた。
で、最初にポリライトでテストをしたと言うのは、波長を変えながら、いくつものフィルターを通して「蛍光作用」があるかどうか?「肉眼」で一通り確認したのだが、結局肉眼で見る限り、文字は見えなかった。
だから、ポリライトも効果がないと諦めていたのだが、ここまでいろいろ試しても何も見えないとなると、ほかに打つ手がない。
だったら、せっかくの機会だから、これを見本にして「テスト撮影」をしておこうと思い、今度はいくつかの波長と4つのフィルターの組み合わせを使って「画像」として撮影して残しておこうとした。
で、紫外線に近い領域から始まって、赤外線に近い領域まで段階露光をしてパソコン上で画像を確認していくと・・・・
なんと、割と赤外線に近い領域において「赤色フィルター」をかけて撮った画像の中に「文字」らしき蛍光作用がちゃんと記録されていた。
この組み合わせは「ポリライト」に載せているが、撮影してみて始めて確認できるくらいの微量の「蛍光作用」が起きていた。
で、もう一度その波長を中心に波長を微調整して、さらに絞り値を変えたりして再撮影すると
20070615-pori

という様にくっきりと文字が浮き出てきた。
まさに、今までのわたくしの技術の及ばない部分であり、わたくしにとってはポリライトは「魔法のランプ」の様に思えた。

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