これもずいぶん以前のものである。
これはNHKで取り上げられた後の作業であるが、よく茶碗の箱には「裏書」というものがある。
それが真贋判定の一つの手がかりとなる。
この箱には「瀬戸黒茶碗」が入っているとのこと。
現状では、和紙にちりばめられた銀の短冊が黒化してしまい、そこに書かれた文字がまったく読めない。
今までは、薄れて読めなくなったものを復元することが多かった。
しかし今回は、「黒の分離」という難しい課題である。
ずいぶん古いコマーシャルに「闇夜のカラスは映りません」というのがあったが、一般的に写真の世界でもそれは言える。
それは、アナログの写真フイルムには「特性曲線」と言われるものが存在し、今のデジタル画像ほど、白から黒までの「諧調」が等しくなかった。
つまり「S字型曲線」と言われ、ハイライトの部分と、シャドーの部分は、諧調が出し にくかった。
ところが、モノクロフイルムの超絶技法に「ゾーンシステム」というものがあり、その写真の諧調を思い通りにコントロールする技がある。
一時、その技術に凝った時期があり、それを応用して、「黒の中の黒」つまり、墨の黒と、銀の黒化した黒を分離させた。
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