今朝ある人から電話が入った。
ちょうど1年ほど前に、関東の「マルコー」という会社の社長から、銀行の計算書の文字の復元の依頼を受けた。
この件は依頼主より、復元見本として使う許可を得ている。
その計算書をめぐり、銀行と争っているという。
当社は「ノンカーボン紙」の消えた文字を復元する技術を有するのだが、過払い請求や契約書にかかわるトラブルで、裁判になっているケースで、その証拠のために依頼を受けるケースが多い。
このモリコーの社長からの依頼もどうもそうらしく、今朝電話があった内容は、融資の支払いの問題だろうが、1年間弁護士を通して話し合ってきたが、銀行がそれを認めようとしないということらしく、裁判を始めたが、銀行の提出してくる書類はコピーを切り貼りしているように思えて、たとえば使われているタイプライターの文字の形で、年代がわからないかとか、使われている紙の年代測定できないか?とか、いろいろと苦労されている様子。
当社は直に手がけていないので、科捜研などのOBの天下り先の会社を紹介した。
そこで、せっかく社長の許可を得ている復元なので、見本として使わせてもらうが
現状画像を見れば、これがノンカーボン紙による計算書であることは確かなので、まず特殊光源を使った復元を試みた
すると、現状画像で見えている青い文字の部分が、くっきりと読める。
ところが肝心な金額の部分が、どうもノンカーボンのコピーが残るような用紙になっておらず、その部分が全く読めない。
そこで斜光により調べてみると
どうも昔のドットインパクトプリンターにより、金額は書き込まれていることがわかった。
そこで、その書類全体を斜光で調べると、いろいろとその痕跡を見ることができた。
ただその斜光の画像は影を見るわけなので、とても見にくいので、特殊光源で得られた情報と、斜光撮影で得られた情報をカラー画像に合成してみた。
するとこんな結果なのだが、この元データーは1億6千万画素ほどある大きなものだが、ネット上にはアップできないので、いくつかの部分の拡大画像を御覧に入れると
こんな感じに当時のドットインパクトプリンターの痕跡が残っていた。
当社の復元記録は、民事裁判でも証拠として採用されることがある。
民事裁判は裁判官の主観がその結果を左右することが多く、裁判官がそれを証拠として認めるかが、大きな勝敗を決める要因となる。
(資)文化財復元センター おおくま
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