久々の書き込みとなったが、実は地元のお寺の『棟札』の復元に追われていた。
画像は契約上お見せできないが、裏表二面あり、片面は赤外線で十分見れる状態となった。
問題なのは、もう一面の方なのだが、上部の1/4くらいの面積の部分が真っ黒になっている。
どうもその棟札は山門の物らしく、すぐよこに台所のような場所があったとの事で、そこのススと埃がその部分にこびりついている様子であった。
ススも墨も成分は同じであるが、場合によれば赤外線でも区別がつくかも??と甘い考えを持っていたが、どちらも赤外線でもほぼ真っ黒状態となった。もちろんポリライトも一通り試して見たものの、やはり反応が無い。
まぁ、極端に予算のない仕事であったが、1週間ほど掛かりっきりでいろいろ試して見た。
すると、ほとんど黒一色と見える上部のススのついた部分に、『微妙』に濃淡があることが判った。
しかし、判ったものの、あまりにも差が無さ過ぎるので、いくらコントラストを調整してもそれを読み取ることが出来ない。
だけど、いゃ読めないからこそ気になる。
そこでそこの部分だけ、蓮如上人の墨文字同様に、超拡大画像をカラーと赤外線画像で作ってみた。
そこまでしてもはっきりとは読めない。
何度か画像処理をやり直したが、うまくその濃淡の差を拾い出すことが出来ないまま、不本意ではあるが、契約が8/31となっていたので、とりあえず納品を済ませた。
という事で、予算の無い仕事であり、予算以上の仕事は十分しているのであるが、それでも職人気質としては、自分が納得できる仕上がりでないのが気になる。
さぁ、それからが本番ということになった。
うちでは、大型カメラの後部に1200万画素の一眼レフを取り付けて、CCDを動かしながらつなぎ写真を作るのだが、レンズは4×5をカバーしたもので、後部のデジカメのシャッターはカメラ側で切るから、理屈の上では露出にばらつきが出ない「ハズ」である。
しかし、あくまでも理屈の上での話で、現実的には、シャッター時間のばらつきだけではなく、もっと問題なのは、同じカットの画像の上下や左右の「濃度差」が実は存在する。
そこが『民生品』の悲しいところだと思うが、これが普通のカラー画像では、さほど問題にならないが、微妙な濃度差を拾おうとする赤外線画像になると・・・
それは、微妙と言うより『極端』な差として現れるから困ったものとなる。
あちらを立ててれば、こちらが立たず・・・
画像を繋ぐのに、上下左右を濃度調整していっても、結局1コマの上下左右で濃度差があるものだから、うまく同じ濃度で繋がらないことになる。
何事もそうだが、まず平均値で中心濃度を合わせて、周りは結局隣の濃度を見ながら、焼きこみが覆い焼きをするしか方法が無い。
これが、なかなか厄介で・・・
数回やり直したが、それでも合わない。
結局そのつど試行錯誤でいろいろと試した中で「ノウハウ」を身につけた。
それからもなんども35枚の画像を繋ぎなおして、やっとムラの無い赤外線拡大画像を作り上げた。
しかも16ビットで濃度を調整していくと、まっ黒の中の微妙な濃度差であった、文字なのか模様なのかはっきり判らないものは、ちゃんと何らかの繋がりがある線として認識できるようにはなった。
認識は出来ても、文字なのか模様なのかの判断が出来ない。
それからも何度も何度もやり直したのだが、結局それが何を意味するものなのかが判らないままで終わるしかないこととなった。
そんなわけで、何かそこにあることが判っていながら、それが何なのかが判らない事ほど、精神衛生上よろしくない思いの、ここ2週間ほどであった。
コメント