ずいぶん以前の話である。
テレビのニュース番組の特集を見た一般人からの話であったが、依頼者は中年の男性であったが、その所有者は、その人の母親であった。
どうもそのご主人が知人から購入されていたらしく、現状の画像を見るとわかるがずいぶんシミがあったり、色あせていた。
一般的に赤外線撮影が、墨で描かれたものには有効なのだが、しかし先日話したように板に描かれ風雨にさらされて薄くなったものは、ほとんど効果がない。
しかし、紙に書かれ、室内で保存されたものには、効果がある場合が多い。
これがそのよい例であるが、赤外線画像を見れば、現状のカラー画像とずいぶん違う。
まず、墨で描かれたものがコントラストが高く記録され、さらに肉眼では、紙がずいぶん色褪せ、そしてシミがひどいが、赤外線画像ではシミは薄れている。
さらに、その後ろのシミにかき消されて、単に汚れだと思われた上半分に、実は山並みが描かれ、雲や木々なのかあるいは竹藪なのかは定かでないが、薄墨で描かれ、その少し上の、山並みとの間に、若干ではあるが、真ん中より少し右側に、丸くそして薄くなった部分が見える。
構図的には少しおかしいようにも思えるが、お月さまの様に見える。
落款は、赤外線では復元できず、落款だけカラー画像で拡大撮影し、画像処理で復元した。
余談ではあるが、この所有者のご婦人、年齢的にすでに70歳はとうに過ぎているように思えるが、とても品が良く、歳をとっても女の色気を持たれていた。
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