この映画、中国料理の老料理人に、子持ちの女性が弟子入りし、一人前に祝宴を任されてやり遂げる姿を描いた、師弟愛の物語である。
藤竜也演じる、ワンさんと言う紹興出身の中国人料理人の元に、金沢のデパートの出店交渉にきた、中谷美紀演じる子持ちの女性が、最初は断られるが、そこで食べた昼の定食の味に魅せられ、通いつめ、そこの主人のワンさんが体を壊し倒れ、再起できずに店を手放すと言ううわさを聞き、勤め先を辞め、彼の弟子になる。
そんなストーリーなのだが、このワンさんを演じている藤竜也は、海猿では厳しい教官役だったが、ここでは本当の中国人になり切って、無精ひげも絵になり、味のある役を演じている。
中谷美紀も、先ほどの「阪急電車」とうって変わって、子持ちの未亡人を実にうまく演じていた・・・
中谷美紀もいいオンナになったなぁ・・・・・
なぜこの映画を見たいと思ったか?
さっきの「阪急電車」でも話したが、私の兄が、中華料理のコックであった・・・
つまり、今は体を壊し、嫁さんの実家で年金生活をしているが、兄は最初は決して好きで中国料理のコックになったのではないと思う。
私の兄弟は6人で、離婚して母親方で育ったが、兄は私たちを食わせるために、最初は京都の有名中華料理店に住み込んだ。
料理の世界は「まかない」つきだから、自分自身は食費が要らないし、住み込みで働き、我々にその分回してくれていたわけだ。
最初のその店には、昔のことだけど、映画俳優がよく食べに来ていたらしい・・・・
その後も店をいくつか変わり、そして、西宮の大きな中華料理屋のコック長になった。
その店は「萬寿亭」といい、地元では有名な高級料理の店であるが、いずれその店を買い取り、自分がオーナーシェフとなった。
私は当時、別れた女房との結婚披露宴もその店で兄貴にやってもらったし、私が結婚してもなかなか写真で食べていけない時期、何度となく「写真なんかやめて、ラーメン屋でもしろ!!」とよく言われた。
当時は西宮自体が、比較的裕福な人が多く、年末の忘年会の時期には人手が足らず、よく駐車場係で呼び出された。
私は当時小さな車しか運転できず、そこの客はベンツやBMWの客が多く、嫌で嫌で仕方がなかった。
それが、阪神大震災であの一帯も被害にあい、客足が一気に途絶えた。
そんな経験があり、私は兄貴が作る中華料理をよく食べていたので、この物語に興味があった。
確かに中華料理は「鍋ふり」と言う、大きくて重い中華鍋を振って、食材をかき混ぜる。
とても腕力のいる仕事だと思うが、中谷美紀はやはりか細い女だから、この鍋ふりはまだまだ・・・・・・
事実、中華料理の世界に、女性は少ないはず。
でも、藤竜也演じるワンさんが、落ち込んでいる弟子のこの女性を、紹興へと連れて行く。
ワンさんには本来女房と娘がいたが、上海にいたころ流感で亡くしている。
逆にこの弟子の父親も亡くなってはいるが、西洋料理のコックだった。
そんなちょうどお互いに、血の繋がらない親子のような関係なのだが、紹興へ二人で行くと、ワンさんの出身の村で大歓迎を受ける。
そこでワンさんは、その弟子を「私の大事な娘」だと紹介する。
そんな、国境を越えた、疑似の親子関係と、師弟愛の、心温まる物語であった。
(資)文化財復元センター おおくま
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