最近は文化財の復元だけでしなく、テレビで何度も取り上げられているので、個人からの依頼が増えた。
お位牌の戒名がいちばん多いが、その次に多いのは「書類」の復元となる。
特に「裁判がらみ」の依頼が多いが、その中でも「遺言書」に絡むものも多い。
身内と言えども、遺産が絡んでくると・・・
争いごとになる。
そんな中で、ちょうど1年前の話しだが、暮れに「消された遺言状」
という、依頼が舞い込んだ。
遺言書の争いとしては、書き換えられていたり、あるいは消されたり、または偽造されていることが多いが、その話は実はすでに遺言書があるのに、別の遺言書が出てきたらしい・・・
相手側から提出された、裁判の証拠なので、遺言書の「原本」ではなく、コピーされたものであった。
本来、私の技術は「原本」に「残された痕跡」を探し出すもので、それがコピーされたものとなると、その痕跡までコピーされることは少なくなり、良い結果は期待されない。
しかしながら、私は「試行錯誤」でこの技術を磨いてきたので、可能な限り努力をし、上から消された文字を復元した。
たまたま、年末年始の忙しい時期であったので、復元費用も若干割増させていただいた。
個人としては、決して安い費用ではないが・・・
それでも「遺産」が絡んでくると、その復元が「証拠」として有利に働く。
これ復元の依頼主から、おかげで裁判に勝てましたと、丁寧にお礼状が届いた。
実はその1年ほど前には、同じ「遺言書」がらみでも、全く逆の経験をしている。
その話は、依頼人と弟の二人が、裁判で親の遺産を争っていて、相手が提出してきた「遺言書」の真贋を争っていた。
その依頼人はコピー紙ではなく、スキャナーで撮られた「デジタルデーター」を持っていた。
そのデーターからの復元だが、スキャナーは、正面から光を充てて撮るので、影ができない。
つまり、紙に残されて「痕跡」を読み取りにくくしている。
それでも苦労して、その遺言書が書かれた紙に、微妙な「凸凹」があるのを見つけ、その復元を試みた。
その凸凹にははっきりと・・・
ほとんど同じ内容の遺言書で、「日付」の違う「遺言書」の文面であった。
その日付は、数日前の日付となっていたが、痴ほう症でもない親がそんな数日の間に「同じ内容」の遺言書を2度も書くのはおかしい。
どうもその「日付」の違いに意味があるらしいのだが・・・
この復元作業の途中で、依頼人と費用のことでもめ事が起きた。
急に依頼人は態度を豹変し、「復元依頼などしていない」と言い出した。
おかしなことで、その遺言書が偽物であることを証明できる証拠なのに、それを依頼人は頑なに拒み始めた。
結局裁判で争ったのだが、その依頼人は、準備書面や答弁書で主張していることが、いくつも「矛盾」していて、それをいくら指摘しても相手には理解できないらしい・・・
まともな神経ではなく「偏執狂」的性格としか言えないほど、主張が偏っていて、いくら理路整然と理屈に合った説明をしても、全く理解しょうとしなかったが・・・
結局裁判官も相手の被告人尋問でも、相手の矛盾を指摘するありさまだった。
こちらがいくら努力して、良い復元結果を出しても、お礼状をくれる人もいれば、逆に逆恨みする人もいて、同じ「一つの出来事」も、当人が受け取り方を間違えれば、答は180度変わる。
(資)文化財復元センター おおくま
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