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剥がされた記憶・・・

お盆の最中、しかも終戦記念日であった。

当社のホームページ上の問い合わせフォームから、問い合わせが入った。

叔父が残した古い写真アルバムがあり、その下に白い紙が貼ってある。

その文字が消えていて読めないとのこと。

早朝にそれを読み、写真を添付してもらい費用の相談をした。

早速土曜日に出社して作業を開始した。

古い写真アルバムにはよくその下に、紙が貼られ説明書きされている。

もう7~8年前になるが、「正岡子規の愛した女」として、噂される女性の写真の下にもメモ書きがあり、それを復元したことがある。

20070929-c 20070929-B
現状画像 復元画像

あれは明治時代の話だが、今回は昭和の時代しかも戦前のものと思われる。

紙に書かれた文字は、多くの場合、墨書きは赤外線に反応し、万年筆などのインクで書かれたものは、紫外線に反応する。

上記の復元では、「可視光内蛍光撮影法」と呼ばれる特殊な波長の光源と、特殊フィルターを用いることで、「蛍光反応」を記録したものである。

ほとんどのものは、これらの技術で文字が読める。

ところが送られてきたアルバムは小さいものだが、27枚の写真が貼られ、それぞれに白い紙が貼られている。

虫眼鏡てみても、文字らしいものはほとんど見えない。

とはいえ、必ず見えるものと思い、1つの写真に貼られた白い紙を、条件を替え、さまざまな撮影法でテスト撮影を行った。

しかし結果は芳しくない・・・・

そこでまた別の写真に添付された紙も試してみた。

何やら、文字らしきものは見えるものの、決して判別できるレベルじゃない。

とは言え、前金をいただいている以上は、見えませんでしたではProとしての名が廃る。

いろいろ試した中で、一番可能性の高い方法で、27枚の写真の下に貼られた紙だけを、拡大撮影し、それを並べて比較をしたのだが、やはり結果は芳しくない。

どうもおかしいと思い、さらに虫眼鏡で、その紙の一つ一つをまじまじと見てみた。

何やら、墨文字の薄いものを確認できる紙もあったのだが・・・

よくよく目を凝らしてみてみると・・・

どうもその紙の表面ががさついているし、部分的に凸凹があったりする。

そこで初めて気づいたのだが、その紙に書かれた文字は、何らかの理由により、カミソリのような鋭い刃物を紙の端にあて、ピンセットのようなもので、表面の一皮を剥ぎ取ってあるように思えた。

復元の技術は「残された痕跡」の「視覚化」の技術であることは、HPにも記してあるのだが、絵馬などの板の上に紙を貼って描かれた絵などは、その紙がはがれると、下の板には痕跡は残らない。

今回もまさにそれと同じで、紙の表面をはがされると、中にはほとんど痕跡は残っていない。

ただ、全くないわけではなく、かろうじて「推測」を加えることで、そこに書かれていてものを知ることもできなくはない。

そんなわけで、その写真に写った人物や周りの風景は、関係者としての記憶をたどり、そして推測できるデーター一式を基にお渡しし、ご本人にお任せした。

剥がされた痕跡-1 剥がされた痕跡-3  
表面をうまく剥がされた写真のメモ書き  

(資)文化財復元センター  おおくま

スタンプ日付の読み取り

先週、ちょっと変わった仕事が舞い込んだ。

電話で問い合わせてきたのだが、車のシートのスポンジに日付がスタンプしてあるが、その日付が薄くて読めない。

簡単に考えたのだが、スタンプは何らかのインクで押されているはずだから、紫外線に反応するか、あるいはポリライトを使えば蛍光反応を示す。

そう確信していたが、実際に作業にかかると、紫外線はおろか、赤外線も全く反応しない。

さらに頼みの綱のポリライトによる「蛍光反応」も、何度も綿密に試したが、効果はほとんど表れない。

送ってこられたシートは3つあり、そのうちの一つは肉眼でも部分的にはうっすらと見えている。

にもかかわらず、特殊撮影では全く反応しない。

かといって、読めませんと返したら、Proとしてのプライドがたたない。

無い知恵を絞り、いゃ試行錯誤の経験がないだけの話だが、一晩布団の中で考え、あくる日にその方法を試すと、若干日付が見えてきた。

かといって、あっさりと読めるほどでもないので、考えた末、本来ならどんなスタンプが押されているのか?その見本画像を送ってもらっていたので、その日付に使われるフォントを探し当て、その見本上に重ねてみた。

それを頼りに、うっすらとしか見えず、しかも部分的にしか見えない数字を探り当てる。

つまり、1部分でもわかれば、そこに痕跡が残る可能性のある数字をまず探す。

その中から、「年・月・日」だから、組み合わせは限られているわけである。

言い換えれば、「消去法」とでも呼ぶべきなのか、ありえない組み合わせを省いていけば、部分的な痕跡からでも、若干の推定を交えることで、とりあえずは、製造年月日は解読できた。

これもよい経験となった。

(資)文化財復元センター  おおくま

消えた文字・復元します-実例

今朝ある人から電話が入った。
ちょうど1年ほど前に、関東の「マルコー」という会社の社長から、銀行の計算書の文字の復元の依頼を受けた。
この件は依頼主より、復元見本として使う許可を得ている。

その計算書をめぐり、銀行と争っているという。

当社は「ノンカーボン紙」の消えた文字を復元する技術を有するのだが、過払い請求や契約書にかかわるトラブルで、裁判になっているケースで、その証拠のために依頼を受けるケースが多い。

このモリコーの社長からの依頼もどうもそうらしく、今朝電話があった内容は、融資の支払いの問題だろうが、1年間弁護士を通して話し合ってきたが、銀行がそれを認めようとしないということらしく、裁判を始めたが、銀行の提出してくる書類はコピーを切り貼りしているように思えて、たとえば使われているタイプライターの文字の形で、年代がわからないかとか、使われている紙の年代測定できないか?とか、いろいろと苦労されている様子。

当社は直に手がけていないので、科捜研などのOBの天下り先の会社を紹介した。

そこで、せっかく社長の許可を得ている復元なので、見本として使わせてもらうが

現状画像
現状画像

現状画像を見れば、これがノンカーボン紙による計算書であることは確かなので、まず特殊光源を使った復元を試みた

ポリライトr@c@4
特殊光源による復元

すると、現状画像で見えている青い文字の部分が、くっきりと読める。

ところが肝心な金額の部分が、どうもノンカーボンのコピーが残るような用紙になっておらず、その部分が全く読めない。

そこで斜光により調べてみると

アップ・左から
ドットインパクトプリンターの痕跡

どうも昔のドットインパクトプリンターにより、金額は書き込まれていることがわかった。

そこで、その書類全体を斜光で調べると、いろいろとその痕跡を見ることができた。

ただその斜光の画像は影を見るわけなので、とても見にくいので、特殊光源で得られた情報と、斜光撮影で得られた情報をカラー画像に合成してみた。

復元画像
復元された消えた文字

するとこんな結果なのだが、この元データーは1億6千万画素ほどある大きなものだが、ネット上にはアップできないので、いくつかの部分の拡大画像を御覧に入れると

アップ
復元金額アップ-1
復元金額-2

こんな感じに当時のドットインパクトプリンターの痕跡が残っていた。

当社の復元記録は、民事裁判でも証拠として採用されることがある。

民事裁判は裁判官の主観がその結果を左右することが多く、裁判官がそれを証拠として認めるかが、大きな勝敗を決める要因となる。

(資)文化財復元センター  おおくま

顔料分析の解説動画2点

当社では蛍光X線分析装置を導入しており、デジタル復元に顔料分析による結果を反映させていますが、それを説明する動画を2点作成し、YouTubeにアップしてあります。

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瀬戸神社の大絵馬・その2

先日書かせてもらった瀬戸神社の大絵馬の復元。

残りの一つが完成しました。

現状画像を見る限り、かなり剥離が進み、復元作業は困難を極め、一度復元できたのだが、実は宮司の佐野様より、古い写真を預かったことをすっかり忘れて、作業を進めていた。

完成後、その写真を思い出し、現状と比較すると・・・

約40年前に撮られた写真には、今と比べて、随分と情報が残っていたことに気づき、急遽修正を加え、無事完成をした。

宮司の佐野さんいわく、「ここ20年で一気に剥離が進んだ」という。

明和大絵馬・現状画像
現状画像
明和大絵馬・古い写真
約40年前の写真
明和大絵馬・復元画像
復元画像

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