かなり写真に凝った人でない限り、「赤外線撮影」なんか経験がない。
アナログのフィルムカメラの時代には「赤外線フイルム」というものがあり、「赤外線フィルター」をレンズに被せれば、赤外線撮影は可能であった。
ただ、可視光線とピントの位置が違う。
その分を補正するための「赤外線マーク」というのが、レンズに刻まれていた。
ところが昨今のデジタルカメラでは、原則として赤外線撮影はできない。
つまり、先ほどのピントの位置が違うということを思い出していただければわかるが、実はCCDは赤外域も撮影可能なのだから、その分可視光部分のピントがぼけて見える。
ゆえに最初からCCDには赤外線カットフィルターがセットされている。
このCCDのフィルターを外せば、デジタルでも赤外線撮影は可能となる。
しかし、あいにく35ミリ用のレンズでは、赤外線は写せても、リング状の光源ムラがひどく、レンズを開放でとれば目立たないが、絞り込むと周辺部と真ん中の画質に極端に影響する。
50mmのマクロレンズ | マクロレンズによるカラー撮影 |
マクロレンズF2.8 | マクロレンズF11.0 |
ゆえに、35ミリデジカメによる赤外線撮影は、復元作業には使えない。
なのに、大型ビューカメラによる赤外線撮影は、そのリング状の光源ムラが出ない。
理由を推測すると、ビューカメラ用のレンズには「ピント調整のヘリコイドがついていない。
つまり、どうもレンズの設計上の問題らしい・・・・
と、いうことは??
35ミリのデジカメだって、大型カメラの後ろに取り付けて、大型カメラ用のレンズをつければ、問題なく撮れる。
とは言うものの、大型カメラ用のレンズじゃ、画角が合わない。
そこで考えたのは「引き伸ばしレンズ」である。
昔の暗室作業で使ったレンズは、撮影レンズ以上にピントがいい。
実はビューカメラでもそれを使っているのだが、35ミリ用の引き伸ばしレンズを、35ミリデジカメにつければ、赤外線も問題なく写る。
引き伸ばし用の50mmレンズ | |
引き伸ばしレンズF4.0
|
引き伸ばしレンズF11.0
|
(資)文化財復元センター おおくま
35ミリのデジカメに、伸ばしレンズを取り付けるアダプターはいろいろあり、その組み合わせで、レンズを直接ボディにねじ込んで、ねじ山をヘリコイド代わりに使って、A4サイズにピントを合わせるのは可能であるが、しかしたとえばF2.8のレンズとF4.0のレンズを比較すると、F2.8は明らかに、レンズの後ろ側が飛び出しているので、直接付けても、カメラのミラーアップ時にぶつかる可能性がある。
そこでF4.0のレンズをわざわざ手に入れた。
引き伸ばしレンズの後部の凸の違い |
ただ、直接取り付けていも、クローズアップで撮るには、ピントが合わない。
そこで次に考えられるのは、接写用のベローズを使うこと。
ところが、これでは105mm程度のレンズで、かなりのクローズアップの写真しか撮れない。
つまり、50mmでは、ボディとの距離が離れすぎるから、さらに極端なクローズアップしか、ピントが合わない。
そこで、最初はこのベローズの改良をいろいろと思案したのだが、金属部を加工するのは難しいし、このままでは4×5の凹みボードのような機能はつけられない。
さんざん思案した挙句、撮影レンズ用の蛇腹フードを使うことにした。
セミ判カメラ用の蛇腹フードに、4×5の凹みボードと、35ミリカメラ用のマウントをセットして、完成。
ご覧のとおり、ベローズに比べると、ボディとレンズの距離は、画期的に近づいた。
しかし、カメラにセットしてテスト撮影をすると、やはり50mmの伸ばしレンズでは、ピントの合う位置が限られる。
ボディに直付けした場合 | F2.8レンズのピントの限界 | F4.0レンズのピントの限界 |
F4.0のレンズは、後部の凸が少ない分、若干広く写せるが、これでは中間のクローズアップが撮れない。
手元に105mmレンズはあるが、それでは複写スタンドの支柱の長さが足りない。
そこで80mmは5.6のレンズを手に入れ、撮影してみた。
50mmレンズ直付け | 80mmレンズのピントの限界 |
これなら使えそう・・・・
(資)文化財復元センター おおくま