先週、ちょっと変わった仕事が舞い込んだ。
電話で問い合わせてきたのだが、車のシートのスポンジに日付がスタンプしてあるが、その日付が薄くて読めない。
簡単に考えたのだが、スタンプは何らかのインクで押されているはずだから、紫外線に反応するか、あるいはポリライトを使えば蛍光反応を示す。
そう確信していたが、実際に作業にかかると、紫外線はおろか、赤外線も全く反応しない。
さらに頼みの綱のポリライトによる「蛍光反応」も、何度も綿密に試したが、効果はほとんど表れない。
送ってこられたシートは3つあり、そのうちの一つは肉眼でも部分的にはうっすらと見えている。
にもかかわらず、特殊撮影では全く反応しない。
かといって、読めませんと返したら、Proとしてのプライドがたたない。
無い知恵を絞り、いゃ試行錯誤の経験がないだけの話だが、一晩布団の中で考え、あくる日にその方法を試すと、若干日付が見えてきた。
かといって、あっさりと読めるほどでもないので、考えた末、本来ならどんなスタンプが押されているのか?その見本画像を送ってもらっていたので、その日付に使われるフォントを探し当て、その見本上に重ねてみた。
それを頼りに、うっすらとしか見えず、しかも部分的にしか見えない数字を探り当てる。
つまり、1部分でもわかれば、そこに痕跡が残る可能性のある数字をまず探す。
その中から、「年・月・日」だから、組み合わせは限られているわけである。
言い換えれば、「消去法」とでも呼ぶべきなのか、ありえない組み合わせを省いていけば、部分的な痕跡からでも、若干の推定を交えることで、とりあえずは、製造年月日は解読できた。
これもよい経験となった。
(資)文化財復元センター おおくま