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ある裁判のための調査報告書
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●●氏依頼による

 

日記の改ざん疑いに関する

 

報告書

 

 

 

(資)文化財復元センター

 

 
●初めに
当社は朽ち果てた姿と化した社寺の絵馬や、黒ずんだり薄くなったり読めなくなった掛け軸などの貴重な文化財を、実物を傷つけることなく「非破壊」のまま、特殊写真撮影技術とコンピューターによる画像処理技術を駆使し、制作当時の姿を推測し画像として復元する技術を持つ、日本に唯一の会社である。
またその実績は多くの新聞・雑誌で取り上げられ、NHKをはじめ多くの民放テレビ各社の報道番組内で何度も「特集」として取り上げられた実績を持つ。
当社の技術に関する詳しい情報は当社のホームページ・http://fukugen.info/wordpress/ を参照されたい。
またその復元技術を活かし、ノーカーボン紙の消えた文字や、消しゴムで消された鉛筆文字、またインク消しで消されたインク文字などの復元技術をも有する、唯一の会社である。
なぉ、この報告書は依頼人の許可を得て、掲載したものである。
           
今回●●氏より、調査の依頼を受け、その結果を報告するものである。
まず最初に調べさせてもらったのが、日記の紙の表面の凹凸である。
本来製紙された洋紙の表面は滑らかであり、また表面が大きく波打つことはない。
しかるに、この日記の1月17日・18日の面と、1月19日・20日の面の2面にわたり、書き込みスペースの一部に大きな表面の浪打ちが確認された。
これは上からガラスを乗せ、斜めから光を当てる方法で撮影したものである。
水でたわんだ紙の表面・17-18日
水でたわんだ紙の表面・19-20日
< 1月17日・18日 >
< 1月19日・20日 >

この現象は明らかに何らかの液体で濡らされ、紙の表面が縮んだことにより起きる現象と推測される。

しかもその波うち状態は、書き込みスペースにのみ発生している。
剥ぎ取られた紙の表面
また、これらの日記のページの一部に大きく拡大すると、紙の表面は滑らかではなく、細かい凸凹が確認できる。
← < 1月17日のページの拡大画像 >
拡大部分を細かく観察すると、斜線状の表面の傷が多く確認できる。
また、その紙の表面には、紙の繊維が滑らかではなく、毛羽立っており、表面の紙の繊維を剥ぎ取られているように見受けられた。
 
そこで詳しく調べるために各日付ごとに拡大撮影を試みた
●1月17日
1月17日・現状画像
現状画像
1月17日・現状画像(全体)
紫外線蛍光撮影画像
●1月18日
1月18日・現状画像(全体)
現状画像
1月18日・蛍光撮影(全体)
紫外線蛍光画像
●1月19日
1月19日・現状画像(全体)
現状画像
1月19日・蛍光撮影(全体)
紫外線蛍光画像
 
●1月20日
1月20日・現状画像(全体)
現状画像
1月20日・蛍光撮影(全体)
紫外線蛍光画像
いずれの日時ともにカラー現状画像と、紫外線照射による蛍光撮影を行った。
これらの画像から判るように、紫外線蛍光撮影画像では肉眼では見えない、書き込み面の汚れのようなものが写っている。
これらは肉眼では見えないが、赤外線や紫外線などを用い、そこに残る痕跡を使い、文化財の当時の姿を復元するときにもちいる技術である。
赤外線は墨書きなどに反応し、紫外線は染料やインク書きなどの痕跡に反応する。
ここで判ることは、この日記に書かれていた文字を消す目的で、なんらかの手法が用いられたものと思われる。
そこで、それらの面に何が書かれていたのか?
それを確かめるために、さらに拡大撮影を試みた。
1月17日
1月17日・蛍光撮影

1月18日
1月18日・蛍光撮影
1月19日
1月19日・蛍光撮影
1月20日
1月20日・蛍光撮影

いずれの面も、書かれていた文字はすでに鋭利な刃物のようなもので剥ぎ取られ、書かれていた文字の読み取りには至らなかった。

ところが2月2日の欄にも一部改ざんされたと思われる痕跡がある。
2月2日・現状画像(全体)

この面に関しては、明らかにその部分に変色した跡が肉眼でも確認できる。

これを同じく紫外線蛍光撮影をすると、前者と同じ結果となる。
2月2日・蛍光撮影-2
ところがこの面に関して、ポリライトと呼ばれる警察の鑑識でももちいられる特殊な光を当てた。
2月2日・ポリライト撮影
すると、その消された部分に、白く消された文字の痕跡が一部残っていた。

そこで念のために、1月17日の面も、同じポリライトを当ててみた。
1月17日・ポリライト札撮影
こちらには、消された文字の痕跡は何も出ない。
一部右上の白い部分は、裏面の蛍光ペンの反応である。
これらのことから判ることは、1月17日~1月20日の面には2月2日の欄のように、消されて変色した跡が確認できない。
つまり、インク消しなどの薬品を使い、同じように文字を消してみたがその痕跡は完全には消えず、2月2日の欄のような変色跡が目立った。
そこで次にその変色跡を消すために、薬品ではなく水を紙の表面に含ませ、濡れて柔らかくなった紙の繊維を鋭利な刃物のようなものを用い、薄く表面を剥ぎ取ったものと思われる。
紙の表面に残る斜線状の傷跡は、その刃物によるものであり、紫外線撮影に残る痕跡は、必ず元から印刷されていた点線の上に集中しているのは、この部分を剥ぎ取ると、線が消えてしまうので、この部分だけは丁寧に残し、書かれていた文字だけを紙の表面を削って消したものと思われる。
インクなどの痕跡が、紙の表面には残っているので、削り忘れた2月2日の欄には、白く蛍光反応として残っていたものと思われる。
しかし、水を使い、薬品跡を丁寧に削り落とした場所には、インクの後は残っていない。
なお、今回使われたと思われる薬品は、「インク消し」として現在市販されているものは2社の製品しかない。
ライオン事務器が出している「万年筆インク消液100」と、ガンジーという会社が出している「万年筆用」と「ボールペン用」の2種類であるが、この日記はボールペンで書かれたものだと依頼主から聞いているが、インク消しは本来万年筆用が主であったことから、「ボールペン用」の存在を知る者は少ない。
今回の改ざんにはたぶん、ガンジー社のどちらかの製品を用いたのではないかと推測できるが、たとえボールペン用のインク消しを使ったとしても、きれいには消えなかったものと思われる。
なお、今回の改ざん箇所に、部分的にではあるが、白い顔料系の絵の具を乗せたような、凸部が存在するのだが、これらはインク消しではなく「三菱鉛筆 修正ペン ホワイティア CLB200EW」という修正ペンによるものではないかと、当社では推測する。
平成27年5月23日
(資)文化財復元センター       代表・大隈 剛由
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(資)文化財復元センター   代表 大隈 剛由
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