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正岡子規の恋したヒト
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とあるルートを介して請けた仕事であるが、どうも正岡子規が奈良の旅館に滞在中に、一目ぼれをしたその旅館の女中が居たらしく、歳のころは16?7才で、目鼻立ちのはっきりした美人であると、随筆に書かれているとのこと。
あるプロジェクトが、その正岡子規を奈良の観光の目玉にし、そのエピソードで話題を作ろうとしていて、その女中の「写真」ではないか?と思える古い写真を見つけ出した。そしてそこには現在では薄くなって読めなくなった「キャプション」が書かれた紙切れがその写真の横に貼られていた。


20070929-f
どうも二人写っている女の、左側に立っている若い女性がそうではないか?と思われるとのこと。
この画像は、アルバムから関係者によって撮られたもので、その画像そのものはもっと白っぽく、特に左の若い女性の顔は白く飛んでいる。
だから果たして、正岡子規の随筆に出てくる目鼻立ちのはっきりした美人なのか?疑問視をされていた。
しかし、うちで実物の写真ではなく、そのコピーされた画像を処理すると、この画像のように鼻筋の通った美人であることが判った。
さて、うちの復元はこれからである。
この画像の右側に何が書かれているのか?はっきりしない紙切れが2枚貼られている。
上のものがこの写真のキャプションで、下の紙切れが、この写真の下に貼られた別の写真のキャプションではないか?と思われるとのこと。
で、この上のキャプションの文字を読めないか?と言うのがうちへの依頼である。
依頼主から実物のそのキャプションを見せて貰った。
20070929-c
こう言う状態である。
確かに書かれた文字があることは判るが、「目視」でははっきり見えない。
「すべて見えるとは言えませんが、80%ぐらいは見えると思います」という事で復元作業に取り掛かった。
まず1200万画素のデジカメで、マクロレンズを取り付け「等倍」まで拡大したが、いくらコントラストや濃度を調整してもはっきり文字は見えない。
書かれたのは「インク」であり、墨書きではないので、赤外線は効かないことは最初から判っていて、見えるとしたら「紫外線撮影」か、あるいは「ポリライト」という事になる。
結局ポリライトを持ち出し、波長を変えながら撮影し、さらにフィルターを換えて撮影を繰り返すうちに、案の定文字が浮き出てきたものがあった。
簡単に説明すれば「青系」の光に「黄色系のフィルター」を掛けて撮影した画像が
20070929-A
20070929-B
となる。
明らかに最初の行に「大西フサエ」と言う女性の名前が浮き上がってきた。
すべての文字が鮮明に見えるわけでもないが、女性の名前ははっきりと読める。
早速依頼主にメールで添付して見せたのだが、どうも正岡子規の恋したヒトは違う名前らしい・・・
残りの文字の解読をめぐって、依頼主といささかのトラブルはあったものの、無事解決して納品させてもらったのだが、「その女性が写真の女性ではなかった」と結論が出たように思えるのだが、必ずしもそうとは言い切れない面も残る。
つまり、正岡子規は明治35年に没していて、その女性の写真も当然当時のものとなる。
写真そのものは確かにその時代のものだろうと思われるし、キャプションも旅館の関係者のアルバムに張られていたものらしいのだが、ひとつ疑問点がある。
それは、キャプションの現状写真をもう一度良く見ていただきたい。
そのキャプションは、あの写真の横に「セロテープ」で貼られていた事になる。
しかし、セロテープは戦後生まれの私が小学時代に発明されたものである。
つまりつじつまが合わないわけである。
いゃ、キャプションそのものが新しいということではなく、下のキャプションにはセロテープの後が無い。
字体は同じヒトのものであるから、問題なのはそのキャプションは、一度剥がれたものを後からセロテープで止められているという事実なのである。
そのセロテープで止めたヒトは後世のヒトであり、写真の人物を知らない。
もともとあの場所に張られていた形跡が確認できれば、話は別だが、たまたまはがれていたキャプションを、あの写真のものだと勘違いした?可能性はまだ残っている。
確かにあの女性は、写真を職業とする私の目から見ても、なかなかの美人である。
そういうことを考えれば、まだあの女性が正岡子規の恋したヒトでは無いとの結論は出せないのではないだろうか?

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